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2006年7月10日 (月)

ヒデ引退

6月22日ドルトムント、ヴェストファーレンシュタディオンにて。

ブラジル戦の試合終了10分前から、僕は双眼鏡を手に、ヒデの動きだけを見つめ続けた。4-1という絶望的な点差と、結局分かり合えなかった仲間との関係と、またすべてがいちからやり直しだという気持ちで、精も根も尽き果てていたはずだった。しかし、彼は例によって(試合が完全に決まってからも)、前線からDFラインまで、何度も何度も走り続けた。最後の10分間は、ほとんど有効なボールタッチはなく、ただ単に上下運動をしていただけだったように思う(スローインで一度ぐらい触ったか?)。その時はもちろん、ヒデが引退する予感があって双眼鏡を見続けたわけじゃない。ただ僕は、ヒデが自分が走ることで仲間に「走れ」というメッセージを出している、それだけじゃない何かを感じて、ヒデの姿を追い続けた。(それが、最後のヒデの姿になるなんて思いもしないで)。終了のホイッスルとともに、彼は一度天を仰ぎ、そして夢遊病者のようにピッチをさまよい、ファンかルシオか、ブラジルの選手とユニフォームの交換をして、フラフラとセンターサークルまで歩いてきたかと思うと、倒れこむように仰向けになった。その時、代表チームのメンバーはヒデ以外、サポーター席に挨拶に向う途中だったと思う。挨拶を終えて、通路へ向うメンバー達は、いろいろな報道でもあったように、誰一人としてヒデのもとへ向わなかった。その時、会場を包んだ空気。それは明らかに、チームをまとめ上げることが出来なかった、実質的なキャプテンで孤高のエースに対する、冷めた気持ちであった。「またヒデがパフォーマンスしてるよ」と。もちろん、引退を決めていたヒデは、パフォーマンスのためにそうしたのではなく、胸に来るいろいろな感情を抑えきれず、ただ横たわっていたにすぎない。もし、メンバーが、ヒデの去就を知っていたら、誰だって彼のもとへ行っただろう。でも、それを明かすことなく、ブラジル戦を戦ったヒデ。激情とパフォーマンス。明らかなるギャップ。ヒデとヒデを取り巻く代表の人間関係は、すべてこういったギャップを矯正できないまま、終わってしまったのだろう。明らかに泣いているヒデの姿を見ているうちに、僕は双眼鏡を覗きながら、「宮本ーっ!!ヒデんとこ行ってやれよ!!」と、思わず叫んでしまった。その声が聞こえたわけではもちろんないが、しばらくして、宮本とアドリアーノが、ヒデのところに行った。どういった会話があったかは分からないが、しばらくして立ち上がったヒデは、小さく笑いながらサポーター席に向かい、両手を挙げ挨拶をした。照れくさそうな、はにかむようなヒデの笑顔を、久しぶりに見たような気がする。

このあと3時から、フランスvsイタリアの決勝戦です。ラストジダンで、ラストデルピエロですね。

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