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2007年7月15日 (日)

『クライマーズ・ハイ』

『クライマーズ・ハイ』横山秀夫著 文春文庫

すばらしい小説です。2004年の本屋さん大賞の2位、著者の横山氏が、直木賞と決別宣言をしていなければ、その年の直木賞の最有力候補だったと言われている作品です。1985年に起きた日航機墜落事故と、同僚や部下の事故、地方新聞社の社内抗争、自分の生い立ちや家庭問題など様々な出来事が、40歳になるデスクの目を通じて描かれます。NHKでドラマ化されたり、もはや名作と呼ばれる本なので、内容に関しては書きませんが、ちょっと別の視点でひとこと。僕はちょうど、日航機事故のあった1985年に今の会社に入ったので、その当時の空気をリアルに覚えているのですが、この本の中に度々出てくる「デスクと局長が胸ぐらを掴みあう」みたいなシーンが、僕が入った会社の中にもたくさんあったように思います。もちろん、この小説の舞台となっている新聞社と、広告会社では熱さの質が違うのですが、会社を含んだ社会全体に、ある種の「熱」があった(残っていた)ことだけは確かです。それは、人や組織や社会が、まだまだ「幼稚」で、「バカ」だったせいかもしれません。世の中がどう変化していくのかわからない中で、個人個人は自分なりの方法で、仕事というものに向かい合っていた。だから、いろいろな場所で軋轢が生まれ、「胸ぐらをつかむ」状況が発生した。この後バブル、長い不況、成果主義、ITバブル…日本社会も個人も、こういったいろいろを経験しながら、「賢く」成長していった。しかし、大人になる過程で、失ったものも多いのではないか。「幼稚」や「バカ」が全面的にいい、というわけではないが、仕事も高度に分業化され、責任や役割がシステム化される中で、『クライマーズ・ハイ』で描かれているような、こういった「熱」に出会うことがないとすれば、それは悲しいことのように思う。

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コメント

その本、以前読みました。確かに今、熱がないのかも。熱くいってみます。さらに。会議やってても、振る舞い上手な方が増えている気がする。よくないかも!変えてみようっと。

投稿: zumino | 2007年7月17日 (火) 午後 02時47分

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