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2008年2月 2日 (土)

『センセイの鞄』『人は思い出にのみ嫉妬する』

『センセイの鞄』川上弘美 平凡社

居酒屋で出会った、高校時代のセンセイに恋する物語。WOWWOWのドラマにもなった川上弘美のヒット作です。主人公は今で言う、「おひとりさま」を楽しむ、恋にはちょっと不器用な、40歳を目前にした女性。お酒の飲み方やつまみの趣味が似てる、そんなところから、なんとなくセンセイのことが好きになっていく。その恋は淡々としていて、若者の恋のように焦るわけでもなく、ゆったり静かに深まっていく。亡くなった奥さんに対するセンセイの思いまで、大切にしようとする主人公。逆に、自分の人生が残り少ないことで、主人公を悲しませるのではないかと、心配するセンセイ。今、目の前にいる相手のことだけじゃなく、相手の過去や未来をも大切にしようとする、そんな大人の素敵な恋が描かれています。

『人は思い出にのみ嫉妬する』辻仁成 光文社

一方こちらの小説で描かれているのは、人を愛するが故に、その人の過去(他の人との思い出)に嫉妬してしまう、ある意味非常に子供っぽい恋愛。実際にあった知人の話を脚色して書いた、と著者があとがきで語っています。ドロドロの4角関係の結末は、自殺1名、自殺未遂1名、サナトリウム療養1名、というかなり悲惨なものです。「人を好きになるのは、その人の思い出になりたいからよ。自分の魂を相手の心の中に預けるということは、つまり、率先して、思い出になる、ということでしょ。その人のいい思い出になることができれば、人は永遠を生きることができる。たとえ早くに死んだとしても」この言葉は、好きな人を残して自殺しちゃう女性の言葉。一見理屈が通っているようで、実はとても自分勝手な考え。勝手に思い出を押し付けられて、残された人はどうなる?『センセイの鞄』のふたりを見習いなさい、と突っ込んだ広告深夜族であった。

「思い出は厄介だが、人間が死ぬまで持ち続けることの出来る宝物である」

思い出が宝物になるかどうかは、その人たち次第。

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