『かもめ食堂』『めがね』
DVD『かもめ食堂』 荻上直子監督(2006年作品)
主演の小林聡美さんが、とても素敵な映画でした。ヘルシンキに旅して、そこに「食堂」を開く日本人女性のお話。いわゆる、「女性ひとり旅もの」ですね。いろいろな女性たちが、その「食堂」を訪れてくる。特に何かが起きるわけでもなく、淡々とした日常が続いていくだけ。事件といえるのは、夫との別れ話でお酒に溺れる女性をみんなで助けるとか、店の前の主人が、忘れ物を取りに忍び込んでくるぐらい、っていうか、あまり大きな事件が起きると、「女性ひとり旅もの」は成立しない。サスペンスものになっちゃう(笑)。
原作は群ようこさん。共演は片桐はいりさんと、もたいまさこさん。「やっぱり猫が好き」的なものに、ヘルシンキの空気と言葉が混ざりこんで、おいしそうな料理シーンも独特で、全体として新しい世界観、空気感を持った映画になっています。
小林聡美さんは、自分のセリフの言い終わりに表情を入れてくる女優さんで、そこが彼女の上手さでもあるわけですが、僕はそこがやや苦手で、女優としてもある「軽さ」を感じさせていたように思います。『かもめ食堂』では、そういった(やや過剰な)表情を無くしたせいで、すごく堂々とした女優さんに感じられました。
DVD『めがね』 荻上直子監督(2007年作品)
監督、主演が『かもめ食堂』と同じコンビによる、これまた「女性ひとり旅もの」。訪れる人が極端に少ない南の島に旅して、そこに住む人たちや、島の景色や空気に、次第にココロ癒されていくというお話。癒される、じゃないですね。この映画の場合、「たそがれる」でしたね。この島が好きな人たちは、人生を「たそがれる」ために、この島を訪れる。一日中何もせず、ただ「たそがれる」ことが旅の目的。主人公は、最初、それを理解できずに戸惑うわけですが、時がたち、やがて自分も「たそがれ」仲間に入っていく。
『かもめ食堂』でも『めがね』でも、「女性たちが、何故ここへ来たのか」は一切語られない。きっと、何かに疲れ、傷つき、悲しみ…そういったことがあっただろうことは確かなんだけど、多くを語らない。実際、ひとり旅をする女性たちは、あまり突っ込んだ話はしないらしいんですね。仲良くなれば別だろうけれど、最初は、ひとり旅の理由なんて語らない。お互いを、「さんづけ」で呼び合って、ちょっと距離のある感じで。そういったリアリティが、映画にも上手に出ています。
タイトルの「めがね」が、頑張って疲れちゃった女性たちを語る小道具になっているのですが、さすがにちょっとわかりやす過ぎるような気がしましたが…そのへんを差し引いても、いい映画だと思いました。
でもさぁ、女性はいいよね。南の島やら温泉やらヘルシンキやらがあってさ。あ、おっさんたちにも、居酒屋があった!
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